関節リウマチの患者さんへ

 2000年5月に行われた日本リウマチ学会に出席してまいりました。

多くの方々の熱心な研究にもかかわらず、リウマチの原因などはいまだにはっきりとはされていないようです。 今回、私も、患者さんのご協力のもとにさまざまな心理検査を行い、その結果を学会にて発表してまいりました。


 その結果はリウマチ患者さん全体でみますと、病気の辛さなどを考えますと無理もないことと思いますが「不安感」と「気分の落ち込み、いわゆる,うつ状態」が著明であるということです。 さらに、今回特に注目した結果として、マイナスの思いが出やすいということがわかりました。


 このマイナスの思いとは、伝統的な仏教に言われるところの煩悩(ぼんのう)という概念にあたり、その煩悩の代表的なものとして心の五毒(貧、瞋、痴、慢、疑)があげられています。


貧(とん)とはむさぼりの心、足ることを知らない欲望を表します。
瞋(じん)とは怒りの心を表します。
痴(ち)とは愚かさ特に病的な愚かさを表します。
慢(まん)とは驕り高ぶる心、他人を見下す心を表します。
疑(ぎ)とは疑いの心、他人を信じない心を表します。


 仏教的にはこのような煩悩が病気を含むすべての不幸の原因と考えられています。このような視点からその内容を含む質問を作成し、それをリウマチの患者さんに協力していただき検討してみました。 


 その結果は、リウマチ患者さんにおいては、いわゆるマイナスの思いすなわち、物事に対して怒りやすい状態、さらに生活に対しての不満足感、また周囲に対して疑いをもちやすいなどの傾向が認められました。


 このような状態はどういうことかというと、結局、不幸感覚が強くあまり幸福な気分でない状態だということです。リウマチというつらい病気になり、不安感も強く気分も落ち込みがちになり不幸感覚が強くなるのは当たり前といえばあたりまえと言えるかもしれませんが、この病気の発症と経過に精神的あるいは心理的なストレスが関与していることも考えられますので、精神的な面でのいわゆる心の健康にまず努力することによって、リウマチの病気の経過も好転させることができるのではないかと考えています。 


以上のような観点から、当院ではリウマチを含む病気の患者さんに対して「心の健康」をお勧めしています。


       『心の葛藤やストレスが、関節リウマチを悪くする。』

 『2003年4月25日、26日日本リウマチ学会にて発表してまいりました。』

 今回の発表は「ストレスや心の葛藤が関節ウマチに及ぼす影響について」です。

関節リウマチは、寛解と増悪を繰り返す慢性の炎症性疾患である。 しかし、この疾患の原因については、いまだに確定的な結論は見られていません。今回、この報告においては、関節リウマチの心身症的側面を明らかにする目的で、疾患の活動性と患者の心の葛藤やストレスとの関係を検討しました。

最初に、特定の薬物を使用せずに長期に経過観察をすることができた症例から、関節リウマチは薬物の投与にかかわらず、自然経過で激しい疾患の活動性の変化を示すことが認められました。すなわち、関節リウマチのこのような激しい活動性の変化はなぜ生じるのかが問題となるわけです。そこで10年以上に、渡って、経過を観察した。関節リウマチの患者さんの心の葛藤やストレスと、関節リウマチの活動性の変化とを調べました。  

 

この症例は、昭和55年(38歳)発症の女性患者さんです。

昭和55年当時、新しい会社で仕事をはじめ、仕事上のストレスが非常に強く感じていたころ、両肩の痛みから発症しました。

平成3年までは、疾患の活動性は落ち着いていまししたが、平成3年3月には、「胃の具合が悪い」、4月には「仕事の引っかかりで少し痛い」、5月には、「仕事や、家庭問題で精神的なストレスが強い、そのために疲れる」6月には「仕事の疲れで痛みが強い」などとカルテに記録されており、仕事上のストレスが強まってきていると訴えています。

このあたりをピークに仕事上のストレスはやや落ち着いてきたように見られます。平成8年6月に会社の都合で、転職することになりました。

これまでの会社と転職した会社を比べて、「前の会社は、人間関係もよく、いい人ばかりだったが、転職した先の会社は人間関係もひどくまるで、天国と地獄ほどの違いがあった」とあとで述べていました。

平成8年9月には「ストレスで調子悪くなる」、10月には指先のしびれ、息切れなどの不安障害による症状も認められ、そのため検査入院をしましが、異常は見られませんでした。平成9年には心臓神経症もみられ、疾病恐怖が強くなりました。

平成11年12月に会社を退職し。「会社の人はひどい人ばかりだった。恨みや憎しみが残っている。会社をやめてほっとした」と語っていました。このように、平成4年と平成10年を二つのピークに会社や家庭問題で人間関係上の問題や葛藤が見られそれに伴ってリウマチの活動性が上昇し、ストレスの解消に伴い活動性も低下してきています。

以上のように関節リウマチ患者を長期的に経過観察した場合、疾患の活動性が患者のストレス状態や心の葛藤と一致して変化していると見られる症例が認められた。
関節リウマチの発症や経過において、心の葛藤やストレスが、大きく関与していることは、明らかではあるが、そのことは、現在一般的に、大きく取り上げられ治療に、用いられることは少ない。そして、関節リウマチの患者の活動のコントロールには、もっぱら抗リウマチ剤を大量使用によって、試みられているいるが、その副作用の大きさに比例して、長期的な効果を十分にあげているとは思えない。今後は、関節リウマチ患者の、疾患の寛解と増悪に対する取り組みは、心の部分からのアプローチが、ぜひとも必要であると、考えられる。

 

 



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